2020-81 SH
劇場観賞
ぴあ映画生活
評判を聞いて、ちょっと遠くまでお出かけして観てきました。
元は高校演劇の全国大会最優秀作品とのことで、なるほどほぼ固定のシチュエーションで話が進んでいきます。
舞台は、タイトル通り甲子園球場アルプススタンドの端っこです。全然甲子園に見えないよいう批評もありますが、そんなことどうでも良いのです。
初出場(?)校の応援に動員されている生徒たちの中でも、こちらもまた学校生活の端っこにいる気分の面々が主人公、母校の1回戦5回から9回ゲームセットまでの間に起こる出来事と会話がほぼストーリーのすべてです。
スタンドの端っこに座って、あまり試合の応援をする気のない端っこの生徒たちの会話で、徐々に彼らのの事情が明らかになっていきます。なぜ彼らが学校生活の端っこに追いやられた気分になってしまったのか、それぞれに事情があって、映画を見た人もそれぞれの誰かには共感したり感情移入してしまうのではないでしょうか。そのうち、真ん中の人も乱入してきて「こっちはこっちで大変なんだから!」と言ってきます。まあ確かに大変なんだろうな。 ただ、よくあるスクールカーストの対立という描き方ではなく、無理な決着をつけるわけでもないところには好感持てました。たぶん実際にそういうことの方が多いだろうから。
この作品、試合の映像は最初から最後まで、1秒も映りません。試合の展開は演劇部の女の子の会話、「これアウトなの?」「1点取ったの?」というような具合で説明されていきます。たまに詳しそうな男の子がフォローをしますが、相手は甲子園の常連校らしく、どうやらかなりの劣勢で試合は進んで行きます。
そうこうするうちに、ある場内アナウンスで劇中でも、映画を見ている観客も一気に盛り上がリます。そうだよねえ、君もずっと端っこの方で耐えてきたんだよねえ。私もこの瞬間、数年来観た映像作品の中でもおそらく最高にアガってしまいました。
演劇である原作を見る機会はありませんでしたが、おそらくかなり忠実に演劇を再現していると思います。普通こういう作品を映画化するときは、色気出して試合映像なんか入れてみて大惨事を引き起こしてしまうケースが多そうですが、余計なことをしなかったところがクライマックスの大成功に結びついていたと思います。
本作の城定秀夫監督という方は全く知らなかったのですが、検索してみたらピンク映画っぽいのからビデオシネマまで、本当に多作の方なのでびっくりしました。