ロザムンド・パイク主演のサスペンス。ブラックコメディ色が強い。
野望に向かって突き進む女性を演じるパイクは、中盤から終盤にかけてもはや怪演といってもいい演技を見せてくれている。
比べてみると1990年代の「誘う女」と今作では時代が違います。キッドマンは、女の武器(死語)を活用し、危ない仕事は頭の悪い男にやらせるが、本作でのマーラは、力仕事も自分でこなし、パートナーも女性。公私ともに。
パイク演じるマーラが欲望のまま突き進むバイタリティが、そのままストーリーの推進力となってグイグイ気持ちよく進んでゆく。
ただ、ラストはあまりにありきたりで残念。
世界は割り切れないことで満ちており、思い通りにならない。正しいことをしようと思ったところで、何が正義なのか。言葉にすれば陳腐な疑問にもだえ苦しむ。
ダルデンヌ兄弟の作品を連想させる。
手持ちのカメラでほぼ全編由宇子の一人称。由宇子の見えないところで何があったか全くわからないので。観客である我々も、由宇子と同じ緊張を共有できた。
このあいだ観た吉田恵輔監督「空白」と、扱っているモチーフ、表現に同じような印象を持った。どちらも傑作。